
ヴフレダル陥落、ポクロウシクにも接近……またロシア軍が大きく攻め込んだの?

都市名だけを追うと、東部戦線が一気に崩れたように聞こえるな。

でも、ポクロウシクはまだ占領されていないんでしょ?

しかも、アウディーイウカから何か月もかかっている。これは攻勢成功なのか?
そこが2024年の東部戦線を分かりにくくしています。ロシア軍は開戦初期のような高速進撃を実現できず、一度の突破でウクライナ軍の後方へ雪崩れ込んだわけでもありません。
それでもロシア軍は、村、陣地、道路、高地を一つずつ奪い続けました。一日に数百メートルでも、それが数か月続けば、守備側は陣地を造り直し、補給路を変更し、足りない予備隊を何度も投入しなければなりません。

遅いから安心、とは言えないのね。

かといって、前進しただけで戦略的勝利とも言えないな。
その二つを同時に見る必要があります。前進の速度だけでなく、どの拠点が失われ、守備側にどんな負担が蓄積し、攻撃側がどれほどの損失を支払ったのかを確認します。
今回は、2024年2月のアウディーイウカ陥落後から同年末までを扱います。中心となるのは、要塞都市ヴフレダルの陥落と、兵站拠点ポクロウシクへの接近です。
中心となる疑問は一つです。なぜロシア軍は、決定的な突破がないまま、ドネツク州で前進を続けられたのでしょうか。
- 前回まで――クルスクへ攻めても東部は止まらなかった
- 戦況サマリー――「ヴフレダルからポクロウシクへ」は一本の矢ではない
- アウディーイウカの先へ――最初の穴はオチェレティネで開いた
- ロシア軍の「遅い前進」はどう作られたのか
- ヴフレダル――正面攻撃で落ちなかった要塞
- ポクロウシク――都市を奪う前に、都市の機能を奪う
- なぜウクライナ軍は止め切れなかったのか
- 遅い前進の代償――土地と兵士を交換する戦い
- 「遅いから失敗」とも「進んだから勝利」とも言えない
- 住民にとって、前線は都市へ近づく前から始まる
- まとめ――ロシア軍の「遅い前進」とは何だったのか
- 時系列――2024年ドンバス再攻勢
- シリーズ記事・関連記事
- 使用画像・図版クレジット
- 参考資料・外部リンク
前回まで――クルスクへ攻めても東部は止まらなかった
2024年2月17日、ウクライナ軍はアウディーイウカから撤退しました。ロシア軍は2023年夏季反攻の停滞後に戦場の主導権を取り戻し、東部で攻撃を続けます。
同年8月6日、今度はウクライナ軍がロシア西部クルスク州へ越境攻撃を開始しました。ロシア本土で本格的な地上戦が始まったことは、軍事的にも政治的にも大きな衝撃でした。

ロシア軍は東部から戻ったんじゃないの?
ロシア軍はクルスク州への増援を必要としました。しかし、ウクライナ側が期待したような規模で、ドネツク州の主力が一斉に引き抜かれたわけではありません。
ロシア軍はクルスク州で対応しながら、ポクロウシク、トレツク、クラホヴェ、ヴフレダル方面の攻撃を継続しました。戦争研究所(ISW)は2024年秋、クルスク侵攻後もロシア軍の東部前進が続いていると評価しています。

クルスクの奇襲だけでは、東部の攻勢を止められなかったわけだ。
そうです。ただし、クルスク侵攻が「無意味だった」と結論づけることもできません。捕虜の確保、ロシア本土への政治的衝撃、ロシア軍予備の拘束など、別の効果があったからです。
ここでは評価軸を絞ります。確認するのは、東部ドネツク州のロシア軍攻勢を止めたかという一点です。その点では、期待されたほどの兵力転用を強いることができませんでした。
戦況サマリー――「ヴフレダルからポクロウシクへ」は一本の矢ではない

図版:Life-Hack Daily作成

ヴフレダルとポクロウシク、かなり離れているね。
ここは重要です。タイトルの「ヴフレダルからポクロウシクへ」は、ロシア軍がヴフレダルから一本道を北上したという意味ではありません。
ヴフレダルは南部、ポクロウシクは北西部にあります。その間にはクラホヴェがあり、さらに北ではトレツク方面の戦闘も続いていました。ロシア軍は複数の正面を同時に押しています。
| 戦線 | ロシア軍の直接目標 | ウクライナ軍に生じる圧力 |
|---|---|---|
| ポクロウシク方面 | アウディーイウカ西方から道路・鉄道の結節点へ接近 | 東部各部隊への補給と予備隊移動を難しくする |
| クラホヴェ方面 | 貯水池周辺の突出部を削り、都市を包む | 北・東・南から撤退路と補給路を圧迫される |
| ヴフレダル方面 | 高地上の要塞とウクライナ軍突出部を解消 | 南ドネツク戦線の観測・防御拠点を失う |
| トレツク方面 | 市街地へ入り、北西の都市群へ圧力 | 限られた歩兵と予備隊がさらに分散する |

守る側は、危ない場所を一つに絞れないな。
その通りです。攻撃側がすべての正面で突破する必要はありません。守備側に予備が少なければ、複数正面で圧力をかけ、どこかで交代、補給、連携のほころびが生じるのを待てます。
アウディーイウカの先へ――最初の穴はオチェレティネで開いた
アウディーイウカから撤退したウクライナ軍は、西側で新しい防衛線を構築しなければなりませんでした。ところが、準備された陣地の質と完成度は場所によって異なり、部隊は弾薬と歩兵の不足も抱えていました。
2024年4月、北西約15キロのオチェレティネ周辺で戦線が動きます。ウクライナ軍の部隊交代が混乱した地点へロシア軍が入り込み、追加部隊を集中させました。

交代の瞬間を狙われたの?
複数の分析が、部隊交代時の問題を突破の一因に挙げています。ただし、責任を一部隊だけへ押しつける説明は不十分です。
西側支援の遅れ、砲弾不足、防御陣地の準備、人員不足、指揮と連携が重なった結果でした。ISWは4月末、ロシア軍がこの区画におおむね一個師団規模の戦力を投入し、ウクライナ側に対して約3倍の優勢を得たとのウクライナ側推計を紹介しています。

弱点を見つけた後の増援が速かったんだな。
そこが転換点でした。ロシア軍は戦線全体を一度に破るのではなく、局地的な穴へ兵力を追加し、オチェレティネを足場として西と北西へ前進します。
ただし、ここでも機甲部隊が後方深くまで突進し、ウクライナ軍を大包囲したわけではありません。突破は戦術的でした。ロシア軍は、その小さな成功を次の小さな攻撃へつなげたのです。
ロシア軍の「遅い前進」はどう作られたのか
2024年のロシア軍は、戦車部隊による大規模な突破だけに頼っていません。多くの区画で、少人数の歩兵を繰り返し前進させ、ウクライナ軍の射撃位置と弱点を探しました。
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)がウクライナ軍部隊への調査から整理した例では、最初に8人前後の分隊を送り、抵抗を受けた場所を砲兵、FPVドローン、UMPK滑空爆弾で攻撃します。その後も小部隊を送り込み、生き残った兵士が遮蔽物へ潜伏し、人数がたまると陣地を襲います。
ロシア軍の反復突撃――一回の突破より「循環」
すべての部隊・戦線が同一手順を採ったわけではない。RUSIの現地調査を基に典型的な流れを簡略化。

最初の人たちが、攻撃を受ける前提みたい……。
資料を読む限り、非常に大きな人的損失を許容する戦い方です。最初の部隊は偵察と攻撃を同時に担い、守備側に射撃させることで位置を明らかにします。
もちろん、ロシア軍のすべての部隊が同じ練度でも、同じ戦術でもありません。比較的よく訓練された部隊が後から投入される例もありました。ですが、攻撃回数によって守備側を疲弊させる性格は共通しています。

戦車を減らしたなら、損失も軽くなったのか?
車両を分散し、一度に失う人数を減らす効果はあります。しかし、「損失が軽い」とは言えません。装甲を持たない歩兵やバイクは、発見されれば砲撃、地雷、FPVドローンに対して脆弱です。
バイクは奇策ではなく、ドローン戦場への適応だった

写真:Tatyana Makeyeva / AFP via Getty Images 出典:CNN.co.jp「ロシア軍、ドローン回避に『バイク部隊』を増強」
前線が偵察ドローンで常時監視されると、戦車や歩兵戦闘車は目立つ標的になります。そこで両軍は、オートバイや全地形対応車を移動、突撃、補給、負傷者搬送に使うようになりました。

戦車よりバイクの方が強いってこと?
いいえ。強いのではなく、役割と危険の形が違うのです。速度、小ささ、安さ、悪路走破性は利点ですが、防護力と搭載量は大幅に劣ります。
大切なのは、バイクを「時代遅れの珍兵器」と笑わないことです。これは装甲車両がドローンに狙われやすくなった戦場への適応でした。同時に、攻撃側が兵士へ大きな危険を負わせている証拠でもあります。
ヴフレダル――正面攻撃で落ちなかった要塞
ヴフレダルはドネツク市の南西、高台に造られた炭鉱都市です。高層住宅から周囲の平地を見渡せるため、ロシア軍の接近を観測し、砲撃を誘導しやすい場所でした。
ロシア軍は2022年から攻略を試み、2023年初めには装甲部隊を投入しました。しかし、地雷原、砲撃、待ち伏せによって多数の車両を失い、正面から都市へ入ることができませんでした。

同じ正面攻撃を繰り返したわけではないんだな。
2024年秋の攻撃では、東から市街地を圧迫するだけでなく、北東のヴォジャネ、西のプレチスチウカ方面へ前進しました。ヴフレダル守備隊の補給路と退路が狭まり、包囲される危険が高まります。
| 比較基準 | 2023年初めの攻撃 | 2024年秋の攻撃 |
|---|---|---|
| 主な接近方法 | 南東側から装甲部隊を正面投入 | 東から圧迫しつつ北東・南西の側面を前進 |
| 防御側へ与える圧力 | 市街地正面の陣地へ集中 | 補給路・退路を含む突出部全体へ拡大 |
| 攻撃側の問題 | 地雷原と観測下で車両損失が急増 | 小部隊の反復投入による人的損失 |
| 結果 | 都市へ到達できず攻撃停滞 | 包囲回避のためウクライナ軍が撤退 |
ウクライナ軍東部司令部は、兵員と装備を温存し包囲を避けるため、ヴフレダルからの撤退を承認したと発表しました。2024年10月1日までにロシア軍が市内を占領したことが、位置特定映像などから確認されています。

2年以上守った都市を、ついに手放したんだ。
撤退は敗北ですが、守備隊の全滅や包囲を避けるための判断でもあります。都市を守り続ける価値と、部隊を次の防衛線で使う価値を比較しなければなりません。
そして陥落したヴフレダルは、ほぼ廃墟になっていました。全面侵攻前に約1万4,000人が暮らした都市は、一つの旗を掲げれば元へ戻る「戦利品」ではありません。

では、陥落で戦線全体が崩れたのか?
そこにも留保が必要です。ヴフレダルの占領はロシア軍にとって象徴的・戦術的成果でしたが、直ちに西部ドネツク州全体を突破できる作戦的成果ではありませんでした。
価値は、突出部を一つ解消し、北のクラホヴェ方面へ圧力を連結しやすくした点にあります。一都市の陥落より、その後に隣接する防衛線の条件がどう変わったかを見る必要があります。
ポクロウシク――都市を奪う前に、都市の機能を奪う
ポクロウシクは道路と鉄道が集まるドネツク州西部の結節点です。前線部隊へ弾薬、兵員、装備を送るだけでなく、損傷車両や負傷者を後方へ移す経路でもありました。
さらに周辺のポクロウシク炭鉱は、ウクライナの鉄鋼生産に必要な原料炭の重要な供給源でした。軍事と産業の両方に関係する都市だったのです。

占領されたら、東部全体へ補給できなくなる?
一つの都市を失えば全補給が止まる、というほど単純ではありません。迂回路はあります。しかし、距離が伸び、通れる車両が減り、ロシア軍のドローンや砲撃に監視されやすくなります。
しかも、都市を占領する前から効果は生じます。道路や鉄道が火力圏に入り、電力、水道、通信が破壊され、住民避難が進めば、ポクロウシクは後方拠点として使いにくくなります。

市役所に旗を立てる前に、兵站価値を削れるのか。
2024年8月から9月、ロシア軍はポクロウシクの南東へ迫りました。ただし、市街地へ一直線に突入するのではなく、セリドヴェ方面を奪い、南から回り込む動きを強めます。
10月末までにセリドヴェがロシア軍支配下へ入りました。その後、ロシア軍は北のポクロウシクだけでなく、南のクラホヴェ突出部を崩す方向へも戦力を向けます。

ポクロウシクを諦めたようにも見えるよ。
そう見えますが、ISWは、ロシア軍がセリドヴェから南下してクラホヴェ周辺の突出部を整理し、将来ポクロウシクを南西から包む条件を作ろうとしていると分析しました。
一方で、これはロシア軍がポクロウシクへ直接進めず、時間と兵力を別方向へ費やしたことも意味します。攻勢側の計画どおりだったと断定するのも、守備側が完全に阻止したと断定するのも早すぎます。
12月11日時点で、公開戦況図を作るDeepStateはロシア軍がポクロウシク南方約3キロまで接近したと評価しました。それでも、2024年末に都市は陥落していません。
なぜウクライナ軍は止め切れなかったのか
ロシア軍の前進を「新戦術の成功」だけで説明すると、守備側の制約を見落とします。2024年前半、米国の追加支援は議会承認が遅れ、ウクライナ軍は砲弾と防空弾を節約しながら戦いました。
支援再開後も、砲弾を工場で生産し、輸送し、前線部隊へ届けるには時間がかかります。さらに、砲弾が届いても塹壕を守る歩兵の不足は解消しません。

兵器だけ届いても、陣地を守る人は増えない。
その通りです。動員制度、訓練期間、部隊の定員、負傷者の復帰、長期勤務者の疲労は、兵器供与だけでは解決できません。
加えて、ロシア軍は滑空爆弾を大量に使いました。通常爆弾へ翼と誘導装置を付けた兵器で、ロシア機はウクライナ防空網の外側から投下できます。
大型の滑空爆弾が陣地や建物を繰り返し破壊すると、守備兵が生き残っていても、その場所を防御拠点として使い続けることが難しくなります。

守備隊が逃げた、で済む話じゃないんだね。
陣地を維持できるかは、勇気だけでは決まりません。頭上の防空、砲兵支援、交代要員、後方道路、通信、負傷者搬送が必要です。その一つずつが圧迫されました。
ロシア軍が作った優位
- 複数正面で攻撃を継続
- 局地的な兵力と火力の集中
- 滑空爆弾・砲兵・FPVの連携
- 損失後も小部隊を補充
ウクライナ軍を縛った制約
- 歩兵と予備隊の不足
- 砲弾・防空弾の不足と到着遅延
- 防御陣地の完成度のばらつき
- 広い戦線とクルスク州への戦力配分
遅い前進の代償――土地と兵士を交換する戦い
ロシア軍は前進しました。しかし、前進距離だけを見て「効率的に勝った」と評価することもできません。
2024年10月6日のISW評価は、公開映像を集計する研究者の記録として、2023年10月9日から2024年10月4日までのポクロウシク地区で、ロシア軍の重装備損失が少なくとも1,830点確認されたと紹介しました。

確認できただけで、これほどか。
対象期間にはアウディーイウカ攻防戦も含まれ、1,830点すべてを「ポクロウシクへの前進だけの損失」とすることはできません。それでも、約1年で東西およそ40キロ前進するために支払った装備面の代償を示す数字です。
人的損失はさらに不確実です。ウクライナ国防省の日次発表、欧米情報機関、独立調査では、戦死、負傷、行方不明の定義と推計方法が異なります。

損失が多いなら、なぜ攻撃が止まらないの?
ロシアは契約兵への高額な一時金、地域ごとの募集、軍需工場の増産、保管装備の再生によって損失を補いました。質を完全に維持できなくても、攻撃回数を保つだけの人数と装備を送り続けたのです。
ここで「人海戦術」の一語に逃げると、砲兵、滑空爆弾、ドローン、募集制度、生産力の組み合わせを見落とします。反対に「ロシア軍が完全に適応した」と言えば、損失の大きさと前進の遅さを見落とします。

問題は、どちらが先に補充できなくなるかだな。
そうです。消耗戦では、損失総数だけでなく、損失を補う速度と社会が負担を受け入れる期間が重要になります。
「遅いから失敗」とも「進んだから勝利」とも言えない
ISWは2024年11月、ロシア軍が2023年10月1日から2024年10月5日までにウクライナで占領した面積を、約2,000平方キロと評価しました。大部分は野原、小集落、中小都市です。
同じ分析では、11月14日時点でロシア軍がドネツク州の残り全域を占領するには、さらに9,322平方キロと複数の大都市を奪う必要があるとされました。

やっぱり、戦争を決める突破ではないんだ。
その通りです。ロシア軍は2024年中にドネツク州全域を占領できず、ポクロウシクも攻略できませんでした。戦略目標に対する距離は、なお大きく残っていました。
しかし、守備側にとって「まだ州全体を失っていない」ことは安心材料になりません。小さな前進でも、要塞、道路、炭鉱、発電所が順番に失われれば、次の年の防御条件は悪化します。

戦術的前進と、戦略的勝利を分ける必要がある。
2024年の評価は、次の二つを同時に認める必要があります。
ロシア軍が達成したこと
- アウディーイウカ後も主導権を維持
- ヴフレダルとセリドヴェを占領
- クラホヴェ突出部を圧迫
- ポクロウシクの兵站機能へ接近
- ウクライナ軍予備隊を継続的に拘束
達成できなかったこと
- 機甲部隊による作戦的な大突破
- ウクライナ東部軍の大規模包囲
- 2024年中のポクロウシク攻略
- ドネツク州全域の占領
- 少ない損失での持続的前進
住民にとって、前線は都市へ近づく前から始まる
2024年10月、ポクロウシク市当局は重要インフラの約8割が損傷または破壊されたと説明しました。ロシア軍が市外にいる段階でも、電気、水、ガスは失われ始めていました。
同年8月半ばに約4万8,000人いた住民は、10月初めには約1万3,000人まで減少したと報じられています。避難できた人にも、住宅、仕事、学校、家族の世話を残す負担があります。

地図の線が来る前に、暮らせなくなるんだね。
前線図は軍隊の位置を示しますが、住民が安全に生活できる境界を示してはいません。滑空爆弾、ミサイル、砲弾、ドローンは接触線の後方まで届きます。
ヴフレダルの陥落も、無傷の都市をロシアが獲得した出来事ではありません。長期の砲爆撃で住民の大半が去り、建物が破壊された後、廃墟となった高地を軍が占領した出来事でした。
まとめ――ロシア軍の「遅い前進」とは何だったのか
ロシア軍が前進を続けた理由は、万能の新兵器でも、一度の見事な突破でもありません。小規模歩兵、砲兵、滑空爆弾、FPVドローン、軽車両を組み合わせ、損失を補充しながら攻撃を反復したためです。
それは速くも、安くもありませんでした。しかし、複数正面で圧力を絶やさず、ウクライナ軍の人員不足、弾薬不足、防御陣地の弱点へ負担を積み上げました。
ロシア軍は2024年中にポクロウシクを奪えず、ドンバス全域を突破できませんでした。それでもヴフレダルやセリドヴェを失ったウクライナ軍は、2025年を前年より不利な防衛線から迎えることになります。

この損失率を、ロシアがいつまで補えるかが次の焦点だな。

私は、次に避難する街がどこなのか気になるよ。
そしてウクライナには、もう一つの問いが残りました。つまり、前線だけで攻撃を止められないなら、滑空爆弾を運ぶ航空機、弾薬庫、指揮所が置かれた『ロシア軍の後方』を攻撃すべきではないか。

だが、西側兵器でロシア領内を撃てば話が変わる。
次回は、ATACMSによるロシア領内攻撃と、ロシアが実戦投入した新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」を扱います。長距離兵器によって、戦場の「安全な後方」が消えていく過程です。
時系列――2024年ドンバス再攻勢
- ウクライナ軍がアウディーイウカから撤退。ロシア軍が西方への攻撃を継続する。
- オチェレティネ周辺でロシア軍がウクライナ軍防衛線へ侵入し、局地的な突破口を拡大する。
- ウクライナ軍がクルスク州へ越境攻撃。ロシア軍は対応しつつドネツク州攻勢を維持する。
- ロシア軍がポクロウシク南東へ前進。ウクライナ当局が住民避難を加速する。
- ウクライナ軍がヴフレダルから撤退し、ロシア軍が都市を占領する。
- ロシア軍がセリドヴェを占領。南のクラホヴェ方面への攻勢を強める。
- ロシア軍の前進速度が秋の攻勢で上昇。ポクロウシク正面だけでなく、クラホヴェと南ドネツクで圧力を拡大する。
- 公開戦況図ではロシア軍がポクロウシク南方約3キロへ接近。都市はなおウクライナ軍支配下にある。
シリーズ記事・関連記事
- ロシア・ウクライナ戦争⑬ アウディーイウカ陥落――消耗戦の帰結
- ロシア・ウクライナ戦争⑭ クルスク侵攻――戦火はロシア本土へ
- ロシア・ウクライナ戦争⑮ 開戦からクルスク侵攻まで――14回でたどる戦争の全体像
- ロシア・ウクライナ戦争統計
- ロシア・ウクライナ戦争 損害数推移
使用画像・図版クレジット
- 「ドンバス再攻勢の前線概略図」:Life-Hack Daily作成。位置関係を理解するために境界線・支配地域を簡略化。
- バイクで移動するロシア軍兵士:Tatyana Makeyeva / AFP via Getty Images。掲載元:CNN.co.jp。
参考資料・外部リンク
- Institute for the Study of War, Russian Offensive Campaign Assessment, April 27, 2024
- Institute for the Study of War, How Delays in Western Aid Gave Russia the Initiative, May 22, 2024
- Institute for the Study of War, Russian Offensive Campaign Assessment, October 1, 2024
- Institute for the Study of War, Russian Offensive Campaign Assessment, October 6, 2024
- Institute for the Study of War, The Ukrainian Defense of Pokrovsk Has Compelled Russia to Change Its Approach, November 17, 2024
- RUSI, Tactical Developments During the Third Year of the Russo–Ukrainian War
- RUSI, Drones Drive Battlefield Motorcycle Tactical Shift
- Reuters, Ukraine’s top commander orders defences bolstered in east after Vuhledar falls, October 3, 2024
- Reuters, Russia knocked out most infrastructure in Ukraine’s Pokrovsk, October 4, 2024
- Reuters, Russia took 196 square km of Ukraine in one week, October 29, 2024
- Reuters, Ukraine loses ground near Pokrovsk, December 11, 2024
- CNN.co.jp「ロシア軍、ドローン回避に『バイク部隊』を増強」
※本記事は公開資料を基に、戦争・戦史上の出来事を分かりやすく整理したものです。交戦当事者の発表、外部推定、証言、記事独自の分析を区別し、確認できない事項はその旨を記載しています。戦況・損害・支配地域等の情報は、記事記載の基準日時点のものです。
※本記事は「東方Project」の二次創作です。キャラクター原作:上海アリス幻樂団/立ち絵素材:うさ義式(うさ義様)/本記事は各国政府・軍・関連組織および東方Project公式とは関係ありません。


コメント