BlackBerryってご存じでしょうか?
BlackBerryはなぜ失敗した?
といきなり聞かれても分からない人がほとんどでしょう。
そもそもBlackBerryの存在すら知らない人も多いかもしれません。
今ではほとんど見かけなくなりましたが、2000年代後半のビジネスパーソンにとってBlackBerryは特別な存在でした。
アメリカ大統領、金融機関の幹部、政府高官、企業経営者――。
世界中のエリートたちがBlackBerryを持ち歩き、その小さな物理キーボードでメールを打っていました。
当時のBlackBerryは単なるスマートフォンではありません。
スマホ市場の王者でした。
しかし現在、その姿を見ることはほとんどありません。
かつて世界シェア20.8%を誇った企業は、わずか数年で市場から姿を消しました。
そしてその代償はあまりにも大きく、会社そのものが解体寸前まで追い込まれることになります。
なぜBlackBerryはここまで転落したのでしょうか。
今回は「失敗したガジェット列伝」として、BlackBerryの栄光と崩壊を振り返ります。

BlackBerryとは?
BlackBerryはカナダのResearch In Motion(RIM、現BlackBerry Limited)が開発したスマートフォンです。
1999年に登場したBlackBerryは、当時としては画期的なモバイルメール機能を搭載していました。
携帯電話でリアルタイムにメールを受信できる仕組みは革命的でした。
特に企業向け市場では圧倒的な支持を獲得します。
BlackBerry成功の要因
- 高いセキュリティ
- 物理キーボード
- プッシュメール機能
- 法人向け管理機能
当時のライバルは携帯電話であり、スマートフォンではありませんでした。
BlackBerryは時代を先取りしていたのです。
絶頂期のBlackBerry
2009年から2011年にかけて、BlackBerryは全盛期を迎えます。
世界スマホ市場シェア(2010年)
| OS | 市場シェア |
|---|---|
| Symbian | 37.6% |
| BlackBerry OS | 20.8% |
| Android | 22.7% |
| iOS | 15.7% |
現在では信じられませんが、当時のBlackBerryはiPhoneと肩を並べる存在でした。
アメリカではオバマ大統領もBlackBerryユーザーとして有名でした。
投資家も経営陣もこう考えていました。
「我々の牙城は揺るがない」
しかし、その慢心が後の崩壊を招きます。

運命を変えたショック
2007年1月。
BlackBerryにとっての運命の日がやってきました。

Appleのスティーブ・ジョブズの初代iPhoneの発表です。
しかしBlackBerry経営陣はこの製品を笑いました。
当時の共同CEOジム・バルシリーは、
「高価すぎる。企業ユーザーは買わない」
と考えていました。
さらに共同創業者マイク・ラザリディスも、iPhoneのソフトウェアキーボードに懐疑的でした。
彼らは決定的に勘違いしていました。
スマホ市場は企業向けから一般消費者向けへ移行していたのです。
失敗① タッチパネル革命を理解できなかった
BlackBerry最大の失敗はこれです。
同社は最後まで物理キーボードに固執しました。
確かにメール入力は快適でした。
しかし消費者が求めていたのは、
- 動画視聴
- SNS
- ゲーム
- 写真撮影
でした。
iPhoneはスマホを「仕事の道具」から「生活の中心」へ変えました。
一方BlackBerryはメール端末の延長線上から抜け出せませんでした。
市場の変化を理解できなかった企業は必ず負けます。
BlackBerryも例外ではありませんでした。
失敗② アプリ市場を軽視した
Appleは2008年にApp Storeを開始。
GoogleもAndroid Marketを拡大します。
しかしBlackBerryはアプリ市場の重要性を理解できませんでした。
アプリ数比較(2013年頃)
| OS | アプリ数 |
|---|---|
| iOS | 約100万本 |
| Android | 約100万本 |
| BlackBerry | 約12万本 |
Instagram、Netflix、人気ゲーム。
ユーザーが使いたいアプリが次々と他OSへ流れていきました。
アプリ開発者もユーザーの少ないBlackBerry市場から撤退していきます。
完全な負のスパイラルでした。
失敗③ BlackBerry 10への大博打
BlackBerryは状況を変えるため、新OS「BlackBerry 10」を開発します。
開発費は数十億ドル規模と推定されています。
そして2013年。
満を持してBlackBerry Z10を発売しました。

しかし結果は大失敗。
発売直後こそ話題になりましたが、売上は急減速します。
市場はすでにiPhoneとAndroidに支配されていました。
後発のBlackBerry 10が入り込む余地はほぼありませんでした。
失敗④ PlayBookという歴史的失敗
さらに傷口を広げたのがタブレット端末PlayBookです。
2011年に発売されたPlayBookは、当初「iPadキラー」と呼ばれました。
しかし実態は惨憺たるものでした。
- メールアプリなし
- カレンダーなし
- 連絡先管理なし
ビジネス端末として売り出しながら、基本機能が欠けていたのです。
市場は即座に拒絶しました。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 在庫評価損 | 約4.85億ドル |
| 販売価格 | 499ドル → 199ドル |
これは企業史に残る失敗製品でした。
スマホ事業の失敗が会社そのものを破壊した
多くの失敗ガジェットは製品単体で終わります。
しかしBlackBerryは違いました。
スマホ事業こそが会社の中核だったのです。
つまりスマホの失敗は、そのまま企業の失敗を意味しました。
2011年度、BlackBerryは過去最高水準となる売上高199億ドルを記録します。
営業利益率も20%近くあり、まさに絶頂期でした。
しかしその後、市場は急速に変化します。
iPhoneとAndroidが市場を支配し始めると、BlackBerryの販売台数は急落しました。
BlackBerry売上高推移
| 年度 | 売上高 |
|---|---|
| 2011 | 199億ドル |
| 2012 | 188億ドル |
| 2013 | 118億ドル |
| 2014 | 68億ドル |
| 2015 | 33億ドル |
| 2016 | 22億ドル |
わずか5年で売上は約90%減少しました。
純利益推移
| 年度 | 純利益 |
|---|---|
| 2011 | 33億ドル |
| 2012 | 12億ドル |
| 2013 | ▲6億ドル |
| 2014 | ▲58億ドル |
| 2015 | ▲13億ドル |
| 2016 | ▲2億ドル |
2014年の赤字は特に深刻で、会社存続すら危ぶまれました。
CEOは退任、創業者は経営の第一線から去った
2012年、共同CEOのジム・バルシリーとマイク・ラザリディスは退任します。
かつて市場から絶賛された創業者たちは、会社の転落を食い止めることができませんでした。
特にラザリディスは後年、
「iPhoneの登場が想像以上だった」
という趣旨の発言を残しています。
スマホメーカーからセキュリティ企業へ
2013年、ジョン・チェンがCEOに就任します。
彼が下した判断は極めて合理的でした。
スマホ事業を諦める。
2016年、BlackBerryは自社スマホ開発を終了。
以降は、
- サイバーセキュリティ
- 企業向けソフトウェア
- 自動車向けOS(QNX)
へ経営資源を集中します。
結果として会社は生き残りました。
しかしスマホ事業は完全敗北でした。
まとめ
BlackBerryは性能が低かったから負けたのではありません。
むしろ2000年代前半までは業界最先端でした。
しかし、
- タッチパネル革命を軽視した
- アプリ市場を理解できなかった
- 消費者市場への変化を読み違えた
- PlayBookで巨額損失を出した
- BlackBerry 10投入が遅すぎた
この連続した経営判断ミスが、王者を一気に転落させました。
2010年に**世界シェア20.8%**を持っていた企業が、わずか数年でスマホ市場からほぼ消滅する。
これは単なる製品の失敗ではありません。
「過去の成功体験に縛られた企業がどう滅びるのか」を示した、テクノロジー業界最大級の失敗事例の一つです。
そして現在も、多くの企業が同じ失敗を繰り返しています。
市場の変化を軽視した瞬間、次に転落するのは自分たちかもしれないのです。
以下は参考リンクです。


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