Juiceroってご存じでしょうか?

Juiceroはなぜ失敗したのでしょうか。
おそらく多くの人はその存在も知らないでしょう。
しかし投資業界やシリコンバレーでは、Juiceroは伝説的な存在です。
なぜならこの企業は、
約1億2000万ドル(当時レートで約120〜130億円)もの資金を集めながら、わずか4年で消滅したからです。
しかも失敗の理由は技術不足ではありません。
競合に負けたわけでもありません。
市場がなかったわけでもありません。
原因はもっと単純でした。
「そもそも製品が必要なかった」のです。
今回は失敗ガジェット列伝として、シリコンバレー史上最大級の失敗製品「Juicero」を解説します。
Juiceroとは何だったのか?
Juiceroは2013年に設立されたアメリカのスタートアップ企業です。
創業者は
Doug Evans(ダグ・エバンス)
健康食品業界で成功経験を持つ起業家でした。
彼が目指したのは、
「コーヒーメーカーのように簡単に高品質ジュースを作れる世界」
でした。
構想そのものは悪くありません。
健康志向市場は拡大しており、投資家も大きな期待を寄せました。
投資家たちは熱狂した
Juiceroは設立後すぐに注目を集めます。
出資した企業の顔ぶれが異常でした。
- Google Ventures
- Kleiner Perkins
- Campbell Soup Company
- Thrive Capital
など超一流VCが出資。
調達額は最終的に約1億2000万ドルへ到達します。
これは当時のハードウェア系スタートアップとしては破格でした。
資金調達推移
| 年度 | 累計調達額 |
|---|---|
| 2013 | 400万ドル |
| 2014 | 3000万ドル |
| 2015 | 7000万ドル |
| 2016 | 1億2000万ドル |
投資家たちは次のNestやTeslaになると信じていました。
しかし実際に完成した製品は、その期待を裏切るものでした。
700ドルの高級ジューサー
2016年。
Juiceroはついに製品を発売します。
価格は699ドル
当時のレートで約7万円。
一般的なミキサーの数倍です。
Juiceroの仕様
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 販売価格 | 699ドル |
| 重量 | 約15kg |
| 通信機能 | Wi-Fi搭載 |
| 専用パック | 必須 |
専用野菜パックを購入し、本体へ入れる。
すると機械が約4トンの圧力で搾汁する。
これがJuiceroの仕組みでした。

開発費のかけ方が異常だった
Juiceroは徹底的に作り込まれました。
内部には航空宇宙レベルの部品が使われています。
Bloombergによると、
製造原価は販売価格を大幅に超えていたとされています。
つまり、売れば売るほど赤字でした。
スタートアップでありがちな戦略ですが、Juiceroの場合は度が過ぎていました。
製品開発そのものが目的化していたのです。

運命の日
2017年4月。
Bloombergの記者がある事実を発見します。
それは驚くべきものでした。
Juicero専用パックは、
手で握るだけでもジュースが出る。
え?
と思いますよね。
機械を使わず、ただ手で押しつぶすだけ。
すると中身が普通に出てきました。
つまり、
699ドルの機械がなくても同じ結果が得られたのです。
(Bloombergの公開動画)
シリコンバレー全体の笑い者になる
この動画は世界中へ拡散されました。
SNSは大炎上。
「世界最高の手動ジューサー」
「Wi-Fi付きの無意味な箱」
Juiceroは一夜にして笑い者になります。
スタートアップ業界でも、
「過剰投資の象徴」
として扱われるようになりました。
売上は崩壊
事件後、販売は急激に落ち込みます。
会社は慌てて値下げを実施。
本体価格推移
| 時期 | 価格 |
|---|---|
| 発売時 | 699ドル |
| 値下げ後 | 399ドル |
しかし誰も買いませんでした。
存在意義そのものが無いからです。
創業者は事実上の敗北
創業者Doug EvansはCEOを退任します。
投資家たちが期待した未来は実現しませんでした。
約1億2000万ドルの投資の大半は当然パーです。
VC業界では、
Juicero=失敗投資
という代名詞になりました。
会社はわずか4年で消滅
2017年9月。
Juiceroは事業停止を発表。
設立から約4年で終了しました。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2013 | 創業 |
| 2016 | 製品発売 |
| 2017年4月 | Bloomberg報道 |
| 2017年9月 | 事業終了 |
スタートアップ史上でも極めて短命な企業でした。
なぜ失敗したのか?
① 顧客の問題を解決していなかった
最大の原因です。
Juiceroは技術を作りました。
しかし顧客の悩みは解決していません。
健康ジュースを飲みたい人は、普通のミキサーで十分でした。
② 技術が目的になった
約4トンの圧力。
Wi-Fi機能。
専用認証システム。
どれも凄い技術です。
しかし消費者はそんなものを求めていませんでした。
技術者が作りたいものと、顧客が欲しいものは違います。
Juiceroはその典型例でした。
③ シリコンバレー特有の過信
投資家も経営陣も「高額資金調達=成功」と思い込んでいました。
しかし市場は残酷です。
いくら資金を集めても、顧客が価値を感じなければ終わりです。
Juiceroはそれを証明しました。
Juiceroが残した教訓
Juiceroは技術的には優秀でした。
資金もありました。
優秀な人材もいました。
それでも失敗しました。
なぜなら、
「本当に必要か?」という最も重要な問いを無視したからです。
約1億2000万ドル(約120〜130億円)。
その巨額資金が投じられた結果が、
「手で絞れるパックを機械で絞る」
という製品でした。
これは単なる失敗ではありません。
シリコンバレーの過剰な楽観主義と、スタートアップバブルの危険性を象徴する歴史的事件です。
現在でも投資家や起業家がJuiceroの名前を出すとき、それは成功事例ではありません。
「誰も必要としていない製品を作るな」
という警告として語られているのです。
以下は参考リンクです。


コメント