
カレーが余ったから、うどんにしたわ。

あれ、昨日はカレーパンだったよな。

捨てずに変身させる。生活の知恵よ。

元の鍋が空になるまで、か。一体それは何料理って言えるんだ?

おいしければ、名前なんてどうでもいいでしょ。
面白そうな話をしていますね。それと似たような会社があります。株式会社リミックスポイントです。

会社なら、料理の材料は株主の金だぜ?

料理を替えるたび、追加料金を取られるの?

その会社が、『どんな料理を残して次へ移ったか』次第だな。
事業名だけを並べると、同じ会社の履歴とは思えません。しかし、その転身には「市場や制度が動いた直後に入り、事業を早く形にする」という一貫した行動が見えます。
今回は、その行動の速さが暗号資産交換所BITPOINTの成長を生み、一方で管理体制とのずれを広げ、約30.2億円の不正流出を経てSBIグループへの売却に至るまでを追っていきます。
2004年、出発点は業務用ソフトウェアだった
リミックスポイントは2004年3月、東京都港区西麻布で設立されました。創業時の主な事業は、企業の仕事を支える業務用アプリケーション・ソフトウェアの開発でした。
そして2006年12月、設立から3年を待たず東証マザーズへ上場します。公開価格30万円に対して初値は101万円。若いIT企業の成長へ、強い期待が集まった出発でした。

初値が3倍超なら、最初から大成功じゃない。
株価の拍手と、事業が生む現金は別です。業務用ソフトは顧客に合わせた開発が必要で、一つの製品を大量販売する商売とは違います。少数顧客や少数製品への依存が強ければ、案件の遅れや需要の変化が業績へ直撃します。

期待は前払いだ。売上の代わりにはならないぜ。
同社は、ソフトウェア一本を磨き続ける道ではなく、新しい需要が生まれた市場へ人と資金を移す道を選びます。これが後の大成長を生む一方、「結局、何の会社なのか」という疑問の始まりにもなりました。
省エネ、中古車、電力――ばらばらに見える転身
2013年には省エネ管理システム「ENeSYS」の販売を開始。2014年には電力売買と中古車売買へ進み、2015年に小売電気事業者として登録、2016年2月から高圧需要家への電力供給を始めました。

ソフトから中古車と電気? さっそく料理を替えすぎよ。

その業種になにか共通点はないのか?
商品は違っても、価格情報を集め、制度変更の直後に入り、取引を組み立てる点は共通していますね。中古車では車両の状態と市場価格の差を見つける。電力小売では発電所を大量に持たず、電気を調達して需要家へ販売する。どちらも情報と調達、販売の組み合わせが重要です。

電力小売には、巨大な発電所を建てずに顧客を増やせる魅力があります。ただし、市場から仕入れる電力価格が急騰し、料金へすぐ転嫁できなければ、売るほど利益が薄くなることもあります。
それでも当時の参入には理由がありました。2016年4月の電力小売全面自由化により、一般家庭や小規模事業者も地域の大手電力会社以外から電気を買えるようになりました。市場が開いた直後なら、既存の契約が固まる前に顧客を獲得できる可能性が高まります。
省エネ管理システムを扱ってきた同社には、電力使用量を測り、料金や設備改善を企業へ提案してきた接点もありました。ソフトウェアから突然、発電所建設へ飛んだのではありません。「情報で使用量を減らす」側から、「電気を調達して届ける」側へ商売の範囲を広げた、と見る方が実態に近いでしょう。

発電所を持たないなら、てっきり楽な商売だと思ってた。

設備負担が軽い代わりに、仕入れ値を背負うんだな。
ただし、料金プランや相対契約で価格変動を抑える余地もあります。どの価格で仕入れ、どの契約で売るかが利益を左右する商売です。
図解1 事業名は変わっても、参入の型は似ていた
注記:同社公式沿革を基に、この記事の中心となる転換点だけを抽出。全事業の開始・終了時期を網羅した図ではありません。
リミックスポイントの強みは、長年同じ商品を作る専門性よりも、動き始めた市場を見つける速さへ移っていました。その速さが最も大きく実ったのが、暗号資産交換所です。
2016年、BITPOINTという大勝負
2016年、同社は暗号資産交換業を行う子会社を設立しました。後の株式会社ビットポイントジャパンです。2017年9月には仮想通貨交換業者として登録されました。

交換所は、利用者が円を入金し、ビットコインなどを売買する場所です。会社は取引手数料や、顧客へ示す買値と売値の差などから収益を得ます。
2017年はビットコイン価格と社会的関心が急上昇した年でした。早く参入し、登録まで進めた意味は大きく、金融関連事業はグループの主要な成長源になります。

登録済みなら、国のお墨付きで安全ね。

営業できる基準と、『事故が起こらない』という保証は別じゃないか?
はい、その区別が重要です。登録は、法令上の基準を満たして事業を行うためのものです。国が暗号資産の価値や将来の安全を保証する制度ではなく、銀行預金のような預金保険もありません。
しかも交換所は、普通の通販サイトより守る対象が多い事業です。顧客の円と暗号資産を預かり、本人確認を行い、24時間動く市場で注文と送金を処理し、不正アクセスを防がなければなりません。

客が増えるほど、手数料も増える。ただ守る残高と処理件数も一緒に増えるぜ。
成長がそのまま管理負担を増やす。ここに、リミックスポイントの成功要因が弱点へ反転する入口がありました。
事故の前に出ていた、管理体制への警告
2018年6月22日、関東財務局はビットポイントジャパンへ業務改善命令を出しました。
公表文は、同社が業務拡大を優先・重視する一方、経営管理態勢に問題があったと指摘しています。さらに、マネーロンダリング対策、利用者財産の分別管理、利用者保護、システムリスクなど、複数の内部管理態勢が改善対象になりました。

事故後の叱責ではない。先に警告があったんだな。

だったら、そこで営業を止めればよかった。
業務改善命令は、必ずしも廃業命令ではありません。問題を直し、適正な事業運営を作るための処分です。同社は改善計画を提出し、毎月、進捗を報告しました。
その結果、2019年6月28日、定期的な報告義務は解除されます。外から見れば、約1年の改善期間を終え、再成長へ向かう節目でした。

改善が一段落したように見えるぜ。

今度こそ安心、と考えるわよね。
しかし、そのわずか約2週間後、会社は最も重い出来事に直面します。
図解2 速さが利益から管理負担へ反転するまで
注記:公開資料を基にした記事独自の因果整理です。行政処分が後の不正流出の直接原因だったと断定する図ではありません。
改善報告の解除から約2週間、暗号資産が流出した
2019年7月11日夜、BITPOINTの取引システムが暗号資産の送金エラーを検知しました。調査の結果、インターネットにつながる「ホットウォレット」から、複数の暗号資産が不正に送金されていることが分かりました。
翌12日、ビットポイントジャパンは新規口座開設を含む全サービスを停止し、不正流出を公表しました。第一報の概算は約35億円。その後の確認で、流出額は約30.2億円と整理されました。

改善が完了したはずなのに……一体何を信じればいいの……。
図解3 約30.2億円の不正流出、その内訳
2019年7月14日の第二報に基づく。換算時点等の違いにより、第一報の概算約35億円とは金額が異なります。
流出した内、約3分の2は顧客から預かった暗号資産でした。顧客の法定通貨と、オフライン中心で管理するコールドウォレットからの流出は確認されませんでした。

全部コールドウォレットに入れればよかったのに。

出金のたび、金庫を開けることになるぞ。非現実的だな。
ええ、その通りです。ホットウォレットは日常の出金を速く処理できます。問題は使うこと自体ではなく、置く量、秘密鍵の管理、異常送金の検知、停止手順など、運用全体をどう縛るかでした。
ここで、会社の「早く市場へ入り、顧客を増やす」という強みが反転します。顧客と取引が増えるほど、守る残高と処理も増えます。成長の速さに、管理の成熟が追いつかなければ、便利さを作った接続点が攻撃面になります。
全額補償しても、失った時間までは返らない
ビットポイントジャパンは、顧客から流出した暗号資産と同じ種類・同じ数量を調達し、全量を保有したと公表しました。円換算額ではなく、ビットコインならビットコインの数量で戻す方針です。

数量で戻すなら、価格変動分も合わせられるな。

じゃあ、全部元どおり?
資産の数量と、利用できなかった時間は別です。サービスは長期間停止し、段階的に再開されました。価格が大きく動く暗号資産では、売りたい時に売れないこと自体が顧客の負担になります。
2020年3月期の事業報告では、不正流出への対応などを含む特別損失40億4,700万円を計上。親会社株主に帰属する当期純損失は51億7,300万円となりました。事故は交換所だけで完結せず、親会社の財務と株主にも届きました。

会社の財布まで空けば、他の事業も苦しくなるね。

料理は違っても台所は一つ、ってことだぜ。
会社はセキュリティ対策と管理体制を整え、法定通貨の入出金、新規口座申込などを順次再開。2019年12月25日までに、事故前に提供していたサービスを全面的に再開しました。
しかし、ここでBITPOINTは消えませんでした。事故後の再建に成功し、暗号資産市場の回復とともに、再びグループの重要事業へ戻ります。
再建したBITPOINTを、なぜSBIへ渡したのか
2022年、リミックスポイントはSBIホールディングスと資本業務提携し、ビットポイントジャパン株式の51%を127億5,000万円で譲渡しました。株式価値は250億円と評価された計算です。

直した途端に売るなんて、もったいない。

成長余地を残して、追加負担だけ軽くしたのかもな。
その見方は51%譲渡の段階までは成り立ちます。SBIグループには金融顧客、暗号資産の流動性、システム投資、規制対応の基盤があります。BITPOINT側は大きな金融グループの資源を使い、リミックスポイント側は49%を持ちながら、事故や追加投資が親会社へ集中する危険を減らせます。
ただし共同運営は長く続きませんでした。2023年3月、残る49%もSBIグループへ譲渡し、BITPOINTは連結対象から完全に外れました。
51%譲渡時の株式価値250億円は、BITPOINTの将来価値に対する当事者間の評価です。そこから「事故前より高く売れた」「全損を取り戻した」と直ちに結論づけることはできません。会社が事故後に投入した資金、停止中に失った利益、再建費用、残る49%の最終譲渡条件まで合わせなければ、投資全体の採算は確定しないからです。
一方、事故を起こした事業だから価値がない、と切り捨てるのも違います。再開後の顧客基盤、交換業登録、システム、運営人材が残っていたからこそ、大手金融グループとの取引対象になりました。失敗後の再建は、失われた信用を完全に元へ戻せなくても、事業を売却可能な資産へ戻す作業でもあったのです。

じゃあ、結局は暗号資産から完全に撤退したのか?
そうはなりませんでした。2024年、同社は暗号資産を自社資産として保有する事業を開始します。顧客資産を預かる交換所ではなく、会社自身が買い、価格変動と運用リスクを負う形です。

やっぱり未練があったのかしら。

1年の時を経て、カムバックしたんだな。
交換所では、顧客資産の保管、本人確認、入出金、システム運営が中心です。一方、自社保有では、価格下落、保管、貸出先の信用、資本配分が中心になります。暗号資産という材料は同じでも、料理と責任の置き場所は別です。
転身で何を捨て、何を持ち越したのか
転身を繰り返す会社を評価するには、事業名ではなく、参入から退出までの一巡を見る必要があります。始めた数が多いこと自体は強みでも失敗でもありません。
| 出来事 | 得たもの | 失った・負担したもの | 次へ持ち越したもの |
|---|---|---|---|
| ソフトウェア | 上場、情報技術、企業顧客への提案経験 | 一本の製品で安定成長する企業像 | 変化する市場を探す行動 |
| 電力小売 | 継続契約、電力調達、需要データ | 市場価格変動と運転資金負担 | 蓄電池・EMSへつながる顧客基盤 |
| BITPOINT | 急成長、規制事業の経験、大きな売却価値 | 流出対応、信用、巨額損失、停止期間 | 暗号資産と金融機関との接点 |
| SBIへの売却 | 現金化、規制・システム負担の切り離し | 交換所の将来利益と経営権 | 資本を別事業へ配る選択肢 |
公開資料を基にした記事独自の整理。「得たもの」が既存株主の一株価値へ残ったかは、資金使途、株式数、後続投資まで確認する必要があります。
BITPOINTの売却は、事故を起こした事業を捨てただけとは言い切れません。再建した事業を大手金融グループへ渡し、価値を現金化した出口でもあります。
一方で、売却代金を得たことだけでは株主の成功になりません。その資金を何へ使い、追加発行した株式数を上回る価値を作り、一株当たり利益や資産へ残せたかまで見て、初めて資本配分の良し悪しを判断できます。


売れた料理より、残った財布を見るのね。

それと、次の鍋にどんな料理が出来るか、だな。
前編まとめ――「何の会社か」より、資本の移動を見る
リミックスポイントは、ソフトウェア会社として上場した後、省エネ、中古車、電力、暗号資産へ移りました。ばらばらな転身の下には、市場や制度が動いた時に早く入り、資金と人を動かす共通した行動があります。
BITPOINTは、その速さが大きな成長へつながった事業でした。同時に2018年の行政処分と2019年の不正流出は、規制産業では顧客獲得と同じ速度で管理、保管、監査、停止手順を育てなければならないことを示しました。
事故後、会社は交換所を再建し、SBIグループへ売却しました。これは撤退であると同時に、事業価値を現金化する出口です。しかし、その出口が既存株主の成功だったかは、売却後の資本配分まで見なければ決まりません。
電力小売の51%を光通信側へ移す新しい再編、蓄電池の販売・自社保有・運用、約1,503BTCを含む暗号資産、増資と配当を一つの財布として整理します。会社全体ではなく、既存株主の「一株」に価値が届く条件を検証します。

つまり、私の取り分が大きくなったかを見るってことね。

鍋ごと大きくなった話にごまかされるなよ。

その前に、今日のカレーうどんは私の分よ。
参考資料
- 株式会社リミックスポイント「沿革」
- 関東財務局「株式会社ビットポイントジャパンに対する行政処分について」(2018年6月22日)
- BITPOINT「仮想通貨の不正流出に関するお知らせとお詫び(第一報)」(2019年7月12日)
- 株式会社リミックスポイント「当社子会社における仮想通貨の不正流出に関するお知らせとお詫び(第二報)」(2019年7月14日)
- 株式会社リミックスポイント「第17期 事業の経過及びその成果」
- SBIホールディングス「株式会社リミックスポイントとの資本業務提携に関するお知らせ」(2022年5月12日)
- リミックスでんき「リミックスでんきとは」
※本記事は公開資料を基に、企業の歴史と経営上の出来事を分かりやすく整理したものです。人物・組織への評価は、確認できる事実と分析を区別して記載しています。
※業績、株式数、保有資産、株価などは記事記載の基準日時点です。後編で扱う将来シナリオは公開資料を材料にした独自の考察であり、会社の計画や業績予想ではありません。本記事は特定の金融商品の売買を勧める投資助言ではありません。
※本記事は「東方Project」の二次創作です。キャラクター原作:上海アリス幻樂団/立ち絵素材:うさ義式(うさ義様)/本記事は対象企業および東方Project公式とは関係ありません。


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