※本記事の企業情報は2026年9月1日時点です。前編では創業から多ブランド企業へ転換するまでを扱い、後編で現在の事業、資金調達、損益、将来性を分析します。

VTuber企業は、もう二社で覚えたわ。

カバーとANYCOLORだな。

ホロライブと、にじさんじ。完璧ね。

その暗記、三社目で崩れるぜ。

また大型グループの親会社?
今回取り上げるのは、株式会社Brave groupです。「ぶいすぽっ!」の運営企業として知られますが、同社を一つのVTuber事務所と考えると、現在の姿をつかみ損ねます。

Brave groupの中には、ゲーム・eスポーツ、音楽、ライブ、EC、XR制作など、来歴も得意分野も違う会社とブランドがあります。その出発点は、ゲーム部プロジェクトを生んだ株式会社バーチャルユーチューバー、のちのUnlimitedでした。

成功した会社が、そのまま大きくなった話ではないのか。
はい。成功、深刻な信頼問題、社名と経営体制の刷新、そして他社との経営統合が連続しています。前編では、Brave groupがなぜ「一ブランドを大きくする会社」ではなく、「複数IPを束ねる会社」へ変わったのかを追います。
Brave groupは、カバーやANYCOLORと何が違うのか
カバーにはホロライブ、ANYCOLORにはにじさんじという、会社名より広く知られた中核ブランドがあります。両社も複数地域・複数プロジェクトを運営しますが、成長の中心は自社でタレントとブランドを育てることでした。
Brave groupは少し違います。自社でRIOT MUSICを立ち上げる一方、ぶいすぽっ!を運営していたバーチャルエンターテイメント、HIMEHINAを運営するLaRaなど、すでに独自文化を持つ会社と経営統合してきました。

人気グループを買い集めた会社なの?

それだけなら、寄せ集めにも見えるな。
その見方は半分だけ正しいでしょう。経営統合は規模を一度に増やせます。しかし本当の価値は、各ブランドが単独では持ちにくい管理、採用、制作、販売、海外展開の機能を共有し、支払った費用以上の成果を生めるかで決まります。
この違いが生まれた理由を知るには、現在のぶいすぽっ!ではなく、2017年まで戻る必要があります。
2017年、動画型VTuberへ賭けた会社
Brave groupの前身は、2017年10月に設立された株式会社バーチャルユーチューバーです。2018年12月に株式会社Unlimitedへ社名を変えました。現在の公式沿革にも、この二つの旧社名が残されています。
当時のVTuber市場では、3Dや2Dのキャラクターが動画へ出演する形式が急速に広がっていました。生配信を毎日続ける現在の姿だけでなく、短い企画動画を制作して公開する「番組型」の活動も有力でした。

配信者より、アニメ番組に近いのね。
Unlimitedが成長の柱にしたゲーム部プロジェクトも、この動画型でした。夢咲楓、風見涼、桜樹みりあ、道明寺晴翔の四人が高校のゲーム部で過ごす設定を持ち、ゲーム実況だけでなく、日常を描く寸劇や企画動画を公開しました。

視聴者はゲームの上手さだけでなく、四人の関係性や物語を追えます。一本の動画に台本、映像、演技、編集を組み込み、キャラクターIPとして長く展開できる。会社にとっては、個人配信へ依存しない制作モデルに見えました。

作品なら、演者が替わっても続けられそうだ。

アニメの役なら交代もあるものね。
そこが、後に大きな食い違いとなります。VTuberは会社が設計したキャラクターである一方、視聴者とは演者の声、反応、ゲームの癖、言葉遣いを通じて継続的な関係を作る存在でもあったからです。
ゲーム部プロジェクトの成功に潜んでいた弱点
ゲーム部プロジェクトは、2018年6月にチャンネル登録者10万人へ到達しました。2019年7月の会社発表では、Unlimitedが運営するチャンネルの累計再生回数は1.5億回を超えていました。創業から二年足らずで、多くの視聴者を集めたことになります。

二年で一億回超え? 大成功じゃない。
数字だけなら、そう見えます。ただし制作型の動画は、撮影、収録、脚本、3D、編集など多くの工程を必要とします。人気が上がって投稿本数を求められるほど、出演者と制作スタッフの負担を管理する能力も必要になります。
さらに会社側は「キャラクターというIPを作る」視点を持ち、ファン側は「この演者だから会いに来る」という感覚を強めていました。成功が速いほど、この二つの認識差を調整する時間は短くなります。

人気が、管理能力を追い越したのか?
後に会社自身が公表した内容から見ると、その問いは重要です。問題は「キャラクターと演者のどちらが本物か」という抽象論ではなく、働く人の業務量とコミュニケーションを誰が管理していたのか、という極めて具体的な組織問題でした。
2019年、演者と運営の信頼が崩れた
2019年4月、ゲーム部プロジェクトの声優スタッフ四人が、制作スタッフによる配慮を欠いたコミュニケーションが重なったとの指摘とともに、業務辞退を申し入れたことが表面化しました。
Unlimitedは同月11日の声明で、不適切なコミュニケーションがあったこと、業務内容や業務量を適切に管理・共有する立場がなく、声優スタッフへ過度な負担を強いる状態だったことを認めました。個人だけでなく、会社全体の体制と文化に要因があるとも説明しています。

会社がそこまで認めたの……。
会社は待遇と社内コミュニケーションの改善、再発防止を約束し、活動は再開されました。しかし同年7月には、四人の声優スタッフを順次交代すると発表します。

キャラクターが残れば、続けられるはずだが。

さっき私たちも、そう言ったわね。
映像上の名前と姿は残せます。しかしファンが積み重ねてきた記憶には、従来の声や話し方、四人の掛け合いも含まれていました。見た目が同じでも、その関係を自動的には移せません。
もちろん、演者交代そのものが常に失敗とは限りません。大切なのは、契約、説明、本人の意思、ファンとの信頼をどう扱うかです。ゲーム部の出来事は、VTuberでは演者管理がIP管理の外側ではなく、中心にあることを示しました。
ゲーム部プロジェクトは活動を縮小し、主要三人は2021年2月に活動を終了しました。この章で確認すべきなのは炎上の細部ではありません。急成長する制作組織に、出演者を支える仕組みが追いつかなければ、人気IPそのものを傷つけるという点です。
2020年、Brave groupへ名前と経営を変える
危機の後、Unlimitedは別の道を選びます。2020年3月にバーチャルミュージックプロダクション「RIOT MUSIC」を始動。同年6月には社名をBrave groupへ変更し、CIと役員体制を刷新しました。同時に約8億円を調達しています。

名前を替えて、問題を忘れさせたの?

社名変更だけなら、そう疑われるな。
その疑いは自然です。社名変更だけで過去の問題が解決したとは言えません。ただし実際には、代表取締役CEOの交代、役員体制の変更、資金調達、新しい事業の立ち上げが同時に行われました。会社の中身も組み替える再出発でした。
新社名のBraveは「勇者」から着想したと説明されています。現在の目的は「世界に、日本の冒険心を」、使命は「80億の、心をうちぬけ」です。創業時の一プロジェクト名ではなく、複数の挑戦を束ねられる会社名になりました。

RIOT MUSIC――一つの成功をコピーしない再出発
RIOT MUSICは、音楽を中心にバーチャルアーティストを育てるプロジェクトです。ゲーム部のような学園寸劇を作り直すのではなく、歌、楽曲、ライブ、映像を組み合わせる別の型を選びました。

人気が出た型を、あえて捨てたのか。
正確には、動画制作の経験を残しながら、価値の中心を変えました。音楽IPでは、本人の歌唱や表現が商品そのものになります。キャラクターだけを交換可能な器として扱う発想とは相性がよくありません。

演者を隠すより、表現を育てるのね。
その理解なら近いでしょう。もっとも、音楽事業は楽曲制作、ライブ会場、3D映像など費用もかかります。すぐ黒字になる安全な逃げ道ではありません。Brave groupは、失った人気を一つのヒットで取り戻すより、異なるIPを育てる能力を作ろうとしました。
2022年、ぶいすぽっ!との経営統合
現在のBrave groupを決定づけた転換は、2022年6月です。同社は、ぶいすぽっ!を運営するバーチャルエンターテイメントと、Palette Projectなどを運営していたMateRealを経営統合しました。

ぶいすぽっ!は、Brave groupがゼロから作ったブランドではありません。バーチャルエンターテイメントが2018年から展開し、ゲームへの本気度と配信者同士の関係性によって独自のファン文化を築いていました。

買ったなら、Brave色へ統一するの?

統一したら、持ち味を消しかねないぜ。
会社発表で示された狙いは、各社のシステム、モデル制作、ノウハウなどを共有することでした。RIOT MUSICは音楽、ぶいすぽっ!はゲーム、Palette Projectはアイドルと、それぞれのカテゴリーを維持したまま経営資源を共用する構想です。
これは、ファミリーレストランの全店舗を同じ看板へ替える統合ではありません。個別の店名と料理は残し、仕入れ、採用、経理、出店支援を共通化する形に近いでしょう。

私の好きな味は変えないでよ。
まさにそこが難所です。共通化が弱すぎればグループになった意味がなく、強すぎればブランド固有の文化を壊します。ゲーム部時代に痛感した「運営と演者・ファンの認識差」は、多ブランド経営でも形を変えて現れます。
一つの事務所から、複数IPを支える企業群へ
2022年の統合後、Brave groupは持株会社型の経営を強めました。2023年にはHIMEHINAを運営するLaRa、XR・3DCG制作を行うディーワン、2024年にはECやデジタル領域を持つSmarpriseなどと経営統合しています。
2025年にはNeo-Porteも加わりました。Brave group公式サイトが掲げる経営統合は、2026年時点で累計11件です。一方で、Palette Projectの事業譲渡や、グループ会社の独立も行われています。

入れるだけでなく、外へ出すこともあるのか。
はい。これはBrave groupを理解する重要な点です。すべてを永久に抱えるのではなく、統合、育成、独立、譲渡を選ぶ「IPポートフォリオ企業」へ近づいています。
ただし、会社が大きくなったことと、統合が経済的に成功したことは同じではありません。管理機能の共有で費用を下げられたのか、人気IPから生まれた利益を成長投資へ回せたのかは、別に検証する必要があります。

人気グループが増えたなら、儲かるでしょ?

会社を増やす費用も、海外投資もあるぜ。
前編で分かったのは、Brave groupが危機の後に単一ブランドの再建だけを選ばず、異なるIPと専門会社を束ねる道へ進んだことです。それは過去の失敗を自動的に帳消しにするものではありませんが、現在の会社を形作った明確な経営転換でした。
続く後編「赤字でも80億円を調達――Brave groupはカバー・ANYCOLORに続けるか」では、IP Production、IP Platform、IP Solutionの三領域を分解します。そして、2025年9月期の約17.3億円の単体純損失と、2026年のシリーズEで調達した80億円超を並べ、「赤字でも資金が集まる理由」と「利益へ変えるための条件」を比較します。

17億円の赤字で、80億円調達?

人気と利益を分ける時間だな。
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- ANYCOLORとにじさんじの企業史【前編】――多数のタレントを同じブランドで束ねるモデルと比較できます。
主な参考資料
- Brave group「会社概要・沿革」
- Unlimited「新規VTuberオーディション」
- MoguLive「ゲーム部プロジェクト、声優交代について公式発表」
- J-CASTニュース「ゲーム部声優交代」
- Brave group「社名変更・CI・役員体制刷新」
- Brave group「経営統合と13.7億円の資金調達」
- Brave group「LaRa社との経営統合」
※本記事は公開資料を基に、企業の歴史と経営上の出来事を分かりやすく整理したものです。人物・組織への評価は、確認できる事実と分析を区別して記載しています。
※将来に関する記述は公開資料を材料にした考察であり、特定の金融商品の売買を勧める投資助言ではありません。
※本記事は「東方Project」の二次創作です。キャラクター原作:上海アリス幻樂団/立ち絵素材:うさ義式(うさ義様)/本記事は対象企業および東方Project公式とは関係ありません。


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